中国輸入ビジネスとPSE認証:必須知識と手続きの完全ガイド

中国輸入ビジネスとPSE認証:必須知識と手続きの完全ガイド

中国輸入ビジネスとPSE認証:必須知識と手続きの完全ガイド

中国輸入ビジネスにおいて、避けては通れない壁であり、同時に信頼の証ともなるのが「PSE認証」です。とくに中国輸入で電気製品を扱う場合、PSEへの理解と対応を誤ると、思わぬリスクを抱えることになります。

「なんとなく聞いたことはあるけれど、詳しくはわからない」「工場が大丈夫と言っているから平気だろう」と考えていると、販売停止や行政処分、罰則の対象となりかねません。

本記事では、経済産業省の公式ガイドラインに基づき、PSE認証の基礎から中国輸入ならではの注意点まで、実務に役立つ情報を網羅して解説します。

中国輸入のPSE対応に不安はありませんか?

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PSE認証とは何か?

日本のPSE制度の概要

電気用品安全法(電安法)のしくみ

💡 「PSE」とは、Product Safety Electrical Appliance and Materialの略称であり、日本の「電気用品安全法(電安法)」に基づく表示制度です。この法律は、電気用品による火災、感電、怪我などの事故を防ぐため、製造・輸入事業者に厳しい安全確保の義務を課しています。

日本国内で対象となる電気用品を輸入・販売する場合、事業者は必ず技術基準への適合を確認し、製品にPSEマークを表示しなければなりません。

電気用品安全法のしくみ

PSE認証が求められる背景

電気製品は、一歩誤ると消費者の生命や財産を脅かすおそれがあります。そのため、国が定めた安全基準(技術基準)をクリアした製品のみが流通するよう、国による規制が行われています。

PSEマークの意味と役割

✔️ 製品安全の証明

PSEマークが表示されている製品は、「輸入事業者が電気用品安全法に基づく義務(基準適合確認・検査等)を履行した」ことの証です。したがって、PSEマークがない対象製品を日本国内で販売することは、法律で明確に禁止されています。

他国の認証(CE・UL・CCC)との違い

中国輸入で散見される誤解が、「欧州のCEや米国のUL、中国のCCCを取得しているから安全」という認識です。しかし、日本の法律では日本の技術基準への適合が必須要件です。海外認証を持っていても、それだけでは日本のPSE基準を満たしたことにはならず、別途、電安法に基づいた手続きと確認が必要です。

なお、PSEマークは「国から認証を受けた証明」ではなく、事業者が電気用品安全法に基づく義務を履行し、自ら適合を宣言したことを示す表示です。

中国輸入ビジネスでPSE認証が重要な理由

中国輸入した電気製品にPSEが必要な理由

1、日本国内での販売規制

電気用品安全法では、PSEマークのない対象電気用品の販売および販売目的の陳列を禁止しています。輸入事業者には、「届出」「技術基準適合確認」「自主検査」といった一連の義務が課せられます。
とくに中国輸入で大量に電気製品を仕入れる場合、1ロット単位でこれらの義務を確実にこなさないと、後からまとめて販売停止になるリスクがあります。

販売事業者の具体的な義務や役割については、以下の経済産業省の公式資料に詳述されています。販売を行う前に必ず内容を把握してください。

2、税関・ECモールでの取り扱い

中国輸入でPSE対象となる電気製品を扱う場合、税関とECモールの両方でコンプライアンスチェックが入ります。
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの主要ECモールでは、コンプライアンス審査が厳格化されています。出品時に「定格銘板(PSEマーク含む)の画像」や「適合性証明書」の提出が求められるのが通例です。また、税関検査でPSE関連の不備が発覚した場合、商品は輸入許可が下りず、廃棄または積戻し(返送)等の措置が取られます。

⚠️ 「工場がPSEを付けている=安全」ではない理由

最も重要な点は、法的責任は「日本の輸入事業者」にあるということです。中国工場(サプライヤー)がPSEマークを印字して出荷したとしても、輸入事業者が自ら検査記録を保存し、届出を行っていなければ、それは「違法表示」となります。工場側の説明をうのみにせず、輸入者自身が主体的に管理・確認する必要があります。

中国輸入で起きやすいPSE関連トラブル

⚠️ サプライヤーの誤情報
「日本へ出荷実績がある」と言われてもそのまま安心することはできません。その実績が法的に正しい手続きを経たものか、あるいは他社の名義で行われたものかは不明だからです。自社名義での手続きが必須であることを理解していない工場も少なくありません。

⚠️ 偽造PSEマーク
正規の手続きや検査を経ていないにもかかわらず、形だけのPSEマークを印字する悪質なケースです。これは重大な法令違反であり、発覚すれば回収命令などの行政処分の対象となります。

⚠️ 証明書の使い回し
特に「特定電気用品(ひし形PSE)」において、他社が取得した証明書(適合同等証明書)のコピーを渡されるケースです。証明書は原則として副本等が輸入者ごとに必要であり、権利関係や有効性を厳密に確認しなければなりません。

中国輸入では「工場の言うことが正しいはず」と思い込みがちですが、実際には、日本側での届出・表示・記録保存まで含めて一連のプロセスを管理することが重要です。

PSEマークの種類(丸形・ひし形)とその区分

PSEマークの種類

電気用品は、事故発生のリスク度合いに応じて「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」の2つに分類され、義務の内容が異なります。

丸形PSE(一般電気用品:特定電気用品以外の電気用品)

📌 対象製品の例

比較的リスクが低いとされる製品群ですが、油断は禁物です。

  • モバイルバッテリー(リチウムイオン蓄電池)
    • 原則として「特定電気用品以外の電気用品(リチウムイオン蓄電池)」に区分され、丸形PSEマークの表示が求められます。
    • ただし、構造や機能によっては「直流電源装置(特定電気用品)」としての性格も併せ持ち、経済産業省のFAQでは、菱形PSEと丸形PSEの両方を表示すべきケースも示されています。
  • LED電球、LEDシーリングライト
  • 加湿器、扇風機、空気清浄機
  • 電気冷蔵庫、電気釜 など

自主検査の必要性

丸形PSEの場合、第三者機関による証明書交付は必須ではありませんが、輸入事業者による「自主検査」は義務です。技術基準への適合を確認した上で、全数(またはロット毎)の検査を行い、その記録を保存しなければPSEマークを表示することはできません。

ひし形PSE(特定電気用品)

⚠️ リスクの高い製品カテゴリー

構造や使用方法から見て、特に危険や障害の発生するおそれが高いものが指定されています。

  • ACアダプター(直流電源装置)
  • 電源プラグ、マルチタップ
  • 電気温水器、温水洗浄便座
  • 電気マッサージ器(家庭用) など

第三者試験機関の検査が必須

ひし形PSEの場合、輸入事業者の義務として以下の2段階の検査が必要です。

  1. 適合性検査: 国の登録検査機関による実機試験および工場の設備確認を受け、「適合同等証明書」を取得する。
  2. 自主検査: 輸入した製品に対して自主検査を行う。

つまり、「第三者機関の証明書」があるからといって、輸入者の「自主検査」が免除されるわけではありません。 両方が必須である点に注意してください。

PSEが必要な製品・不要な製品(日本の規制に基づく分類)

PSEが必要な製品・不要な製品

PSE認証が必要な代表的な製品

  • モバイルバッテリー
    2019年より規制対象。リチウムイオン蓄電池を内蔵し、持ち運び可能なものが対象です。
  • ACアダプタ
    中国輸入において最も注意が必要な品目です。電源コンセントに接続して直流電源(DC)等を出力する装置は「特定電気用品(ひし形)」となります。
  • 美容家電・加熱家電
    ヘアドライヤー、ヘアアイロンなど、電熱線やモーターを使用する機器の多くは規制対象です。
  • LED照明
    電球形LEDランプや一部のLED照明器具本体は、一般的に「特定電気用品以外の電気用品」として丸形PSEの対象となります。具体の該当性は、電源部の構造や定格によって異なります。

PSEマークが不要な製品

  • USB低電圧デバイス
    コンセント(AC100V)に直接接続せず、USBポート(DC5V等)からの給電のみで動作する製品(例:USB扇風機、バッテリー非搭載のUSB加湿器)は、原則として電気用品安全法の対象外です。
  • 電池不要のガジェット
    乾電池のみで動作する製品も対象外です。
  • PC周辺機器の一部
    パソコン本体やプリンターなどは対象外となるケースが多いですが、それに付属するACアダプタや電源ケーブルはPSE対象となるため注意が必要です。

グレーゾーン品の判断基準

電圧・回路・付属アダプタの有無

「本体はPSE対象外だが、付属のアダプタは対象」というケースが頻発します。

💡 例:充電式マッサージガン

  • 本体そのものは電気用品安全法の対象外となる場合もありますが、内蔵・交換可能なリチウムイオン電池や付属のACアダプタなど、セットの一部だけがPSEの対象となるケースが多くあります。
  • 実際の区分は構造や用途によって異なるため、個別に専門家や検査機関へ確認することをおすすめします。

このように、セット品の一部だけが規制対象となる場合もあるため、構成品ごとの確認が不可欠です。

リチウムイオン電池・バッテリー製品のPSE要否早見表

製品タイプPSE要否理由・補足
リチウムイオン電池セル(セル単体)不要セル単体は「電気用品」に該当しない。UN38.3など輸送規制のみ必要。
バッテリーパック(保護回路付き)必要(丸形)保護回路を含むパック型は「特定電気用品以外の電気用品」に該当。
モバイルバッテリー必要(丸形)2019年法改正により完全義務化。届出+自主検査+表示が必須。
USB給電のみで動作する機器(内蔵バッテリーを含む)不要AC100Vに接続しない機器は電気用品安全法の対象外。
充電式マッサージガン・美容家電等(USB充電)本体は不要/付属品は場合により必要本体は対象外だが、付属ACアダプタがある場合はひし形PSEが必要。
ACアダプタ(直流電源装置)必要(ひし形)「特定電気用品」に該当。最も厳重なカテゴリー。

PSE認証の取得方法(フロー解説)

経済産業省が案内している正規フローに基づき解説します。

PSE認証の取得方法-フロー解説

仕入れ前に確認すべきポイント(中国輸入の観点)

✔️ 中国輸入で新しく電気製品をOEM・ODMする場合、輸入後に「PSEが取れない」と判明するのを防ぐため、発注前に以下の情報をサプライヤーに確認し、裏付けを取ります。

  • 型式番号(Model No.): 書類と現物が一致しているか。
  • 定格電圧・周波数: 日本の規格「AC100V、50/60Hz」に対応しているか。
  • プラグ形状: 日本国内用(Aタイプ)であるか。
  • 技術基準適合のエビデンス: CBレポートや試験成績書があるか。
  • 他法令との関連: 技適(無線機能)、PSC(レーザー等)の対象ではないか。
  • 日本語対応: 取扱説明書や本体表示ラベルを日本語化できるか。

一般電気用品(丸PSE認証)の取得手順

  1. 事業届出: 輸入事業開始の日から30日以内に、管轄の経済産業局へ「電気用品輸入事業届出書」を提出します。
  2. 技術基準への適合確認: 製品が日本の技術基準(JIS等)に適合していることを確認します。工場保有のテストレポート等を利用する場合も、そのレポートが日本の基準を満たしているか精査が必要です。
  3. 自主検査: 輸入した製品に対し、外観、絶縁耐力、通電検査などを実施し、検査記録を作成・3年間保存します。
  4. 表示: 基準を満たした製品に、以下の事項を表示します。
    • PSE記号(丸形)
    • 届出事業者名(輸入元の会社名など)
    • 定格電圧(V)、定格電流(A)または定格消費電力(W)、定格周波数(Hz)
    • 二重絶縁構造等の記号(該当する場合)

特定電気用品(ひし形PSE認証)の取得手順

丸形の手順に加え、登録検査機関とのやり取りが発生します。

  1. 第三者試験機関(登録検査機関)での適合性検査: 登録検査機関にサンプルを提出し、技術基準適合性検査を受けます。
  2. 工場検査: 検査機関が製造工場へ出向き、製造設備や品質管理体制(検査設備が正しく校正されているか等)のチェックを行います。
  3. 適合同等証明書の交付: 合格すると証明書が発行されます。輸入者はこの原本(または副本)を保管します。
  4. 事業届出・自主検査・表示: 丸形と同様に、国への届出、自主検査(全数等)を行い、ひし形PSEマークを表示します。

OEM/ODMの際の注意点

✔️ 輸入者名義の扱い

製品銘板に表示する「輸入事業者名」は、法的な届出を行った日本の事業者(あなた)の氏名または名称でなければなりません。これを省略したり、海外工場の名前のまま販売することはできません。

✔️ 中国工場との役割分担

技術資料の提供や、検査機関へのサンプル送付、工場立ち入り検査への対応など、工場の協力が不可欠です。契約段階で「PSE取得および維持への協力義務」を確約させておくことが重要です。

PSE認証にかかる費用・期間・隠れコスト

丸PSEの費用・期間

  • 費用: 工場が有効なCBレポート等を持っていれば、自主検査設備の導入費や確認費用程度です。しかし、新規に検査機関へ依頼する場合は数万円〜数十万円かかります。
  • 期間: データ確認のみなら即時〜数週間。新規検査なら1〜2ヶ月。

ひし形PSEの費用・期間

  • 費用: 検査費用、工場検査費用、検査員の渡航費(必要な場合)、証明書発行費などで、総額50万円〜200万円以上かかるケースも一般的です。
  • 期間: スムーズに進んでも3ヶ月、修正が入れば半年〜1年以上を要します。

中国輸入で特に発生しやすい追加コスト

  • ⚠️ 再試験費用: EMC試験(ノイズ試験)などで不合格となり、回路修正後に再試験を行う場合の追加費用。
  • ⚠️ 仕様修正費用: 日本の高い安全基準(難燃性プラスチックの使用、絶縁距離の確保など)を満たすための部材変更コスト。
  • ⚠️ 計測器の校正費用: 工場検査において、工場が保有する計測器(電圧計、耐圧試験機など)の校正期限が切れている場合、その更新費用を求められることがあります。

PSEマーク/PSE認証に関するリスク・注意点

PSEなしで販売した場合のリスク

PSEなしで販売した場合のリスク

⚠️ 行政処分・回収命令

違反が発覚した場合、経済産業省より製品の回収(リコール)命令や販売停止命令が出されます。社名公表の対象となり、事業継続が困難になる可能性があります。

⚠️ 税関差止

輸入通関時にPSE対応の不備(届出書の欠如、表示不備など)が発覚すると、日本国内への引き取りが許可されません。

⚠️ ECモールのアカウント停止

Amazonや楽天などは法令違反に対して非常に厳しい措置を取ります。PSE関連書類の提出要請に応じられない場合、当該商品の出品削除だけでなく、アカウント全体の停止(凍結)に至るリスクがあります。

偽PSEマークの見分け方

マークデザインと表示義務

正規の表示には、以下の要素が近接して記載されている必要があります。

  1. PSE記号(丸形またはひし形)
  2. 届出事業者名(日本の輸入者名)
  3. 登録検査機関名(ひし形の場合のみ必須、JET, JQA, TUVなど)
  4. 定格(電圧、消費電力等)

これらが欠けていたり、事業者名が中国工場のローマ字表記のままであったりする場合は、不適合品の疑いが濃厚です。

PSE以外に必要な可能性がある認証

製品によっては、PSEと重複して以下の法令遵守も求められます。

  • 技適(電波法): Bluetooth、Wi-Fi等の無線機能を有する場合。
  • PSC(消費生活用製品安全法): レーザーポインター、乳幼児用ベッドなど。
  • 家庭用品品質表示法: 電化製品の一部や繊維製品に対する表示義務。
  • 💡 PSE(電気用品安全法)は、電気製品の安全性を確保するための制度で、電源に接続して使用する製品が対象です。 一方、PSC(消費生活用製品安全法)は、事故リスクが高い特定製品(レーザーポインター、ライター、家庭用マッサージ器など)に適用されます。

    両者はまったく別の法律であり、「PSCがあるからPSEも不要」といったことはありません。製品によっては、PSEとPSCの両方が必要になるケースもあるため、区分の確認が重要です。

まとめ:PSEと中国輸入で絶対に外せないポイント

PSE認証は、中国輸入ビジネスにおいて単なる「手続き」ではなく、事業を守るための「参入障壁」であり「安全の保証」です。

  1. 輸入者責任の徹底: 工場任せにせず、輸入者自身が法的主体であることを自覚する。
  2. 正確な製品区分: 対象品目か、丸形かひし形か、付属品の扱いはどうかを正確に把握する。
  3. 法令遵守の継続: 届出、自主検査、記録保存、正しい表示の4点セットを確実に実行する。

安易にPSEなしの製品を扱うリスクは計り知れません。正規の手順を踏んで安全な製品を中国から輸入し、日本のユーザーに安心して届けることこそが、長く安定した中国輸入ビジネスを構築する唯一の道です。

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