以下の記事では、「中国の特許証を保有している=日本で販売しても合法である」というよくある誤解について解説しています。

日本特許庁(JPO)の公式データベースで独立して最終確認を行うことは不可欠であり、その核心的な目的は、日本国内ですでに登録され、かつ有効に存続している第三者の知的財産権を、自社の事業活動が侵害しないことを確認する点にあります。
具体的には、体系的な検索を通じて、次の4つの重要なポイントについて明確にする必要があります。
- 権利が存在するか、その種類は何か
- 権利者は誰か
- 保護範囲はどこまで及ぶのか
- その権利は現在も有効か
権利の存在と種類を確認する
日本に「どんな権利があるのか」をまず把握する
JPOで二次検索をするとき、最初にやるべきことはシンプルです。
それは、日本国内に、その商品や技術に関する知的財産権が「存在するかどうか」、そして存在するとしたら「どの種類の権利なのか」を確認することです。
ここで大事なのは、中国のサプライヤーが「中国で特許を持っている」「中国では問題なく販売している」と言っているかどうかではありません。
日本で問題になるのは、日本で有効な権利があるかどうか、それだけです。
日本に同一・近似の在先権利がないかを確認する
まず確認すべきは、あなたが輸入・販売しようとしている商品や技術と同じ、または非常に近い内容の権利が、日本で既に登録されていないかという点です。
サプライヤーから提供された中国特許について、技術キーワード、発明名称、国際特許分類(IPC)を用いて、JPO(日本特許庁)のデータベースで検索を行います。

JPOのデータベースでは、発明特許、実用新案、意匠(外観デザイン)を重点的に確認します。
- 特許(発明):技術的な仕組み・構造・動作原理
- 実用新案:比較的シンプルな技術構造
- 意匠:商品の外観・デザイン
ここで多くの輸入事業者が誤解しがちなのが、「中国で特許を取っているなら、日本でも同じ内容は登録されていないはずだ」という思い込みです。
しかし実際には、中国と日本の制度は独立しており、中国ではA社が特許を持っていても、日本ではB社が同じような内容を先に登録している、ということは起こり得ます。
JPOでの二次検索は、この「日本側にすでに存在する権利」を見つけるための作業です。
たとえ技術の出所が同一であっても、日本の特許権者から許諾を得ていなければ、侵害と判断される可能性があります。そのため、次の確認(権利者・保護範囲・有効性)に進むことが不可欠です。
権利の種類が商品にどう関係するかを整理する
次に重要なのが、見つかった権利がどの種類なのか、そして自分の扱う商品とどう関係するのかを整理することです。
知的財産権と一口にいっても、実務上の意味は大きく異なります。
- 特許権
商品の「中身」や「仕組み」に関する権利です。
外から見えなくても、内部構造や機能が同じであれば侵害になる可能性があります。 - 意匠権
商品の「見た目」に関する権利です。
商標が付いていなくても、全体の印象が似ていれば侵害と判断されることがあります。 - 商標権
ブランド名やロゴに関する権利です。
分かりやすい反面、「ロゴを消せば大丈夫」と誤解されがちです。
たとえば、「特許はなさそうだが、意匠が見つかった」「商標は使っていないが、構造に関する特許がある」といったケースも普通に起こります。
この段階では、どの種類の権利が、どの観点で自分の商品に関係してくるのかを頭の中で整理できれば十分です。
まだ結論を急ぐ必要はありません。
権利者(誰の権利か)を確認する
「誰が持っている権利か」でリスクは大きく変わる
次に確認すべきなのが、その権利を誰が持っているのかという点です。これは見落とされがちですが、実務上は非常に重要です。同じ特許や意匠が存在していても、権利者が誰かによって、取るべき対応やリスクの大きさが大きく変わります。
日本の権利者と中国サプライヤーに関係があるかを確認する
検索によって見つかった日本特許について、「特許権者」または「出願人」の名称を確認します。
それが、中国サプライヤーの日本法人、親会社、または同一の多国籍グループに属する関連会社かどうかをチェックします。たとえば、
- 中国本社と日本子会社
- 同一グループ内の別法人
- 親会社・子会社の関係
この場合、理論上は「グループ内で許諾が取れる可能性」があります。
ただし、ここで注意すべきなのは、中国の会社から「問題ない」と言われただけでは足りないという点です。
日本での販売については、日本側の権利者からの明確な許諾が必要になります。
社内ルール上、中国法人には日本での許諾権限がない、ということも十分にあり得ます。
つまり、関係会社だからといって自動的に安全になるわけではないが、交渉の余地はある、という位置づけです。
完全に無関係な第三者が権利者の場合は要注意
一方で、最も注意が必要なのが、日本の権利者が、中国サプライヤーと完全に無関係な第三者である場合です。
たとえば、
- 日本の競合メーカー
- 日本のブランド企業
- 特許の管理会社(いわゆる権利管理専門会社)
この場合、リスクは一気に高まります。
なぜなら、あなたが日本に商品を輸入・販売する行為そのものが、その第三者の権利を直接侵害する行為になり得るからです。
サプライヤーがどれだけ「中国では問題ない」と説明しても、日本の権利者から見れば、それは一切関係ありません。
特に、過去に税関での差止めや、侵害訴訟を積極的に行っている権利者の場合、「見つかったら何か起きる」前提で考えておくべきです。
権利者が同一グループ内である場合:リスクは相対的に低いと考えられますが、それでも日本国内での販売については、当該グループからの正式な内部許諾が必要です。中国法人との売買契約のみでは不十分です。
権利者が完全に無関係な第三者(競合他社や別企業など)の場合:リスクは極めて高くなります。当該商品を輸入・販売する行為は、その日本企業の特許権を直接侵害することになります。
権利の保護範囲を確認する
「どこまでがアウトなのか」を具体的に見極める
JPOで二次検索を進めるうえで、多くの方がいちばん悩むのがこの段階です。
それが、見つかった権利が「どこまで保護しているのか」、そして自分の商品がその範囲に入るのかどうかという判断です。
権利が「存在する」だけで、すぐに侵害になるとは限りません。
重要なのは、その権利がカバーしている範囲と、あなたの商品との重なり具合です。
特許・実用新案は「特許請求の範囲(請求項)」を読む
特許や実用新案で最重要なのは、「特許請求の範囲(請求項)」です。
ここに書かれている内容が、法的に保護される技術の核心になります。
実務上のポイントは、次の考え方です。
- 明細書全体ではなく、請求項に何が書かれているかを見る
- 表現が多少違っても、技術的な構成要素が一致していないかを確認する
- 「一部だけ違う」場合でも、本質的な構成が同じなら侵害と判断される可能性がある
ここで大事なのは、「似ているかどうか」ではなく、請求項の要件をすべて満たしているかという視点です。
ただし、これは専門性が高い作業です。技術内容が複雑な場合は、無理に自己判断せず、「リスクあり」と整理したうえで弁理士に相談するのが安全です。
意匠権は「全体の視覚印象」で判断される
輸入ビジネスで特にトラブルが多いのが、意匠権(外観デザイン)です。意匠権の特徴はシンプルで、同時に厄介です。
- 商標が付いていなくても侵害になり得る
- 細部が違っていても侵害と判断されることがある
- 判断基準は「普通の消費者の全体的な印象」
つまり、「ぱっと見たときに似ているかどうか」が極めて重要になります。
JPO(J-PlatPat)で意匠を確認するときは、
- 正面・背面・側面などの図面
- 商品全体のシルエット
- 特徴的な形状や配置
を、自分の商品と並べて比較することが大切です。
「ロゴを消した」「色を変えた」「一部形を変えた」だけでは、侵害を回避できないケースが非常に多い点には注意が必要です。
権利の法的状態を確認する
「今も生きている権利か」を必ずチェックする。最後に確認すべきなのが、その権利が現在も有効かどうかという点です。意外と見落とされがちですが、実務上は欠かせない確認項目です。
JPO(J-PlatPat)で「法的状態」を必ず確認する
JPO(J-PlatPat)のデータベースでは、各権利について法的状態(ステータス)を確認できます。
ここで見るべきポイントは以下のとおりです。
- 登録されているか(権利化されているか)
- 存続期間が満了していないか
- 年金未納などで失効していないか
- 無効審判や取消審判が係属していないか
| 権利 | 保護期間 |
|---|---|
| 特許権 | 原則として、登録日から最長出願日の20年後の日までです(特許法第66条第1項、第67条第1項)。 |
| 実用新案権 | 登録日から最長出願日の10年後の日までです(実用新案法第14条第1項、第15条)。 |
| 意匠権 | 登録日から最長出願日の25年後の日までです(意匠法第20条第1項、第21条第1項)。 |
| 商標権 | 登録日から10年間で、申請により更新が可能です(商標法第19条第1項、第2項)。 |
もし権利がすでに失効している場合、その権利自体は障害になりません。ただし、注意点があります。
- 同じ権利者が別の関連特許・意匠を持っている可能性
- 競合他社が別の形で権利を押さえている可能性
つまり、「この1件が無効だから安心」と即断するのは危険です。周辺権利まで含めて確認する意識が重要になります。
有効な権利が見つかった場合の考え方
もし日本で有効な権利が存在すると確認できた場合、選択肢は大きく3つです。
- 日本の権利者から正式な許諾を得る
- 設計・仕様・外観を変更して回避する
- その商品は扱わないと判断する
ここでやってはいけないのが、「見つからなければ大丈夫だろう」という楽観的判断です。日本では、輸入の時点で侵害と扱われ得ることがあります。販売前であっても、税関で差し止められる可能性があることを忘れてはいけません。
まとめ|輸入事業者のための行動チェックリスト
1688 を通じて仕入れを行う場合、コンプライアンス審査を実施する唯一正しいタイミングは、「発注・支払いを行う前」です。1688 サプライヤーの資格審査や、日本向け輸入に適した商品カテゴリーについては、以下の記事をご参照ください。

日本市場に商品を持ち込む輸入事業者として、最終的な法的責任を負うのは輸入者自身です。そのため、本記事で紹介している JPO 検索方法は、単なる参考情報ではなく、日本の知的財産権を体系的に確認するための実務フローそのものです。

- 情報の取得
サプライヤーに対し、中国特許番号を正確に提出させ、可能であれば特許明細書(特に請求項部分)の提供も求めます。 - 基礎的な検索
JPOの「工業所有権情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を利用し、特許番号、キーワード、IPC分類による一次検索を行います。 - 重点分析
検索結果として得られた日本特許について、権利者、法的状態、出願日を重点的に確認します。 - 専門的判断
技術が複雑、または商業的価値が高い製品については、費用をかけて日本の特許事務所や知的財産専門の弁護士に正式な「自由実施調査(FTO)」を依頼し、法律意見書を取得することが、最も安全な方法です。
また、どれほど事前調査を十分に行ったとしても、最終的な仕入契約には必ず 「知的財産権に関する保証および損害賠償条項」を盛り込む必要があります。これは、これまで行ってきた調査結果を法的な担保へと転換するための重要なステップであり、輸入ビジネスにおけるリスク管理の最後の防衛ラインと言えるでしょう。
ラクット輸入(Rakutto)は、中国輸入に特化した実務支援サービスとして、
日本税関の水際実務と実際の輸入現場を熟知したチームが、
「止められない輸入」を実現するための具体的な対策をご提案します。











