国際貿易を行う企業にとって、関税や消費税の納付は重要なプロセスです。このプロセスを効率化することは、取引のスムーズな進行やキャッシュフローの維持に大きく貢献します。特に、納付のタイミングや方法がコストや取引スピードに直接影響するため、適切な手段を選ぶことが競争力の向上に繋がります。 近年、リアルタイム口座を活用した納付方法が注目されています。

本記事では、リアルタイム口座を利用するメリット、開設方法、そして具体的な活用方法について解説します。
目 次
リアルタイム口座とは
リアルタイム口座ご利用のメリットについて
・納付手続きの簡略化
・コスト削減
・安全性と利便性の向上
リアルタイム口座の開設について
・必要なコード
・輸出入者コード
・リアルタイム口座申請の必要書類
・設定する口座
・リアルタイム口座申込方法
リアルタイム口座の活用方法
・オンラインバンキングや専用アプリへのログイン
・即時振込・入金機能の利用
・残高の即時確認
・資金移動のスケジュール管理
・取引履歴の確認
・利用状況のセキュリティ管理
・サポートセンターの活用
まとめ
リアルタイム口座とは
リアルタイム口座とは金融機関で提供される口座サービスの一種で、取引がリアルタイムで反映されることを特徴としています。これは、入金、出金、振込残高確認などの操作が即時に処理され、結果がその場で確認できる口座を指します。
リアルタイム口座ご利用のメリットについて
電子納付手続きでは、納税者が輸入申告ごとに納付指示を行う必要があり、手間と時間がかかるのが課題でした。このため、手続きの煩雑さを解消し、納税の利便性を向上させる仕組みとして「リアルタイム口座振替方式(ダイレクト方式)」が導入されました。
リアルタイム口座のご利用により、輸入手続きやコスト管理が大幅に改善されます。以下、具体的な利便性について説明します。
輸入申告の際に都度納付手続を行う必要がなく、リアルタイム口座を利用することで、自動的に関税や消費税が処理されます。
煩雑さの軽減: 個別の申告ごとに納付指示を行う手間が省けるため、事務作業の負担が減少します。
迅速な貨物引取: 支払いが即時処理されるため、貨物の早期引き取りが可能となり、業務のスピード感が向上します。
立替手数料の不要化: 通常、立替手数料が発生するケースがありますが、リアルタイム口座ではこれを不要とするため、コストを抑えることができます。
有利な納付方法の選択: ダイレクト方式の口座振替契約を活用し、輸入申告時に最も有利な納付手段を選べる柔軟性があります。
現金不要: 現金を持ち運ぶ必要がなくなるため、安全性が確保されるだけでなく、利便性も高まります。
口座残高の迅速対応: 万が一、口座不足が発生しても、一般口座を利用して残高を追加すれば、すぐに納付を再開することが可能です。
リアルタイム口座は、煩わしい手続きの削減や効率化だけでなく、コスト管理や安全性向上に寄与する点で、輸入業者にとって非常に有用な仕組みです。
この仕組みを活用することで、貿易業務のさらなる最適化が期待できます。
リアルタイム口座の開設について
リアルタイム口座の開設手続きは、「税関」「金融機関」「NACCSセンター」と複数の事業体が関与するため、少し複雑ですが、順を追って進めればスムーズに手続きが進められます。下記では、通関業者を通じて税金を納付している輸入者を対象として必要な手順を詳しく解説します。
必要なコード
リアルタイム口座を利用するためには次のコードが必要になります。
・法人のお客様:法人番号
・個人のお客様:輸出入者コード(JASTPROにて取得)
法人のお客様は法人番号のみでリアルタイム口座を開設できますが、現在保有している輸出入者コードの更新を行わない(削除する)場合にはデメリットが発生します。詳しくはこちらをご参照ください。
輸出入者コード
輸出入者コード(日本輸出入者標準コード)は、輸出入手続きにおいて必要な登録番号です。通関業務や税金の支払い手続きで使用されるため、リアルタイム口座開設や輸出入業務を行う際に取得が必要です。
輸出入者コードの役割
- 通関業務の効率化
- 税金納付の管理
- NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)での取引記録の一元化
取得手続き
- 登録要件:
- 日本国内に本店または主たる事業所がある法人
- 税関事務管理人を定めた場合も登録可能
- 日本国内に住所または居所がある個人事業者
- 必要書類(コピーを用意):
書類種別 | 法人 | 個人事業主 |
運転免許証 | ◯ | ◯ |
マイナンバーカード | ◯ | ◯ |
パスポート(顔写真ページ) | ◯ | ◯ |
保険証書 | ◯ | ◯ |
法人番号指定通知書 | ◯ | – |
法人番号公表サイトのプリント | ◯ | – |
開業届(住民票の氏名・屋号記載) | – | ◯ |
青色申告承認申請書 | – | ◯ |
法人印鑑証明(発行後6ヶ月以内) | ◯ | – |
住民票(発行後6ヶ月以内・マイナンバー非記載) | – | ◯ |
登録手数料(6,600円) | ◯ | ◯ |
⚠注意事項
- 登録はすべてWebから申請
- 入金確認後、最短即日で審査完了。翌日に登録住所へ「登録完了のお知らせ」を郵送。
- 有効期間は3年間。変更や更新手続きが必要な場合があります。
リアルタイム口座申請の必要書類
登録はすべてWebから申請
入金確認後、最短即日で審査完了。翌日に登録住所へ「登録完了のお知らせ」を郵送。
必要書類(全てコピーを用意) | 法人 | 個人事業主 (屋号で登録) | |
どれか1つ | 運転免許証 | ◯ | ◯ |
マイナンバーカード | ◯ | ◯ | |
パスポート ※顔写真、氏名が記載されているページ | ◯ | ◯ | |
保険証書 | ◯ | ◯ | |
どれか1つ | 法人番号指定通知書 | ◯ | |
法人番号公表サイトのプリント | ◯ | ||
輸出入者コード | ◯ | ||
どれか1つ | 住民票に記載のある氏名と 屋号が記載されている開業届 | ◯ | |
青色申告承認申請書 | ◯ | ||
法人印鑑証明 ※発行後6ヶ月以内 | ◯ | ||
住民票 ※発行後6ヶ月以内・マイナンバーの記載がないもの | ◯ | ||
登録手数料(6,600円) | ◯ | ◯ |
設定する口座
リアルタイム口座は、すべての金融機関が対応しているわけではありません。
現在の口座が対応していない場合、新たに対応金融機関の口座を開設する必要があります。
対応金融機関一覧【銀行】(PDF)
https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/data/tetsuduki/realtime/index.html/realtime_ginko.pdf
対応金融機関一覧【信用金庫】(PDF)
リアルタイム口座申込方法



手続き手順は下記となります。
対応金融機関を確認
NACCSセンターの申込WEBフォームから申請
- NACCS掲示板にアクセスし、申込WEBフォームを使用。 申込みはこちらです。
- 必要情報を入力後、申出書ダウンロードURLが送付される。
- 申出書を郵送
送付先
〒105-0013
東京都港区浜松町1丁目3番1号
浜離宮 ザ タワー事務所棟
輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社
システム運用部 利用契約課 宛
※NACCSセンターで受領されるまでに約2~3週間必要。
登録完了通知
- 登録完了後、メールアドレス宛に通知。
- 通常、約2~3週間程度で完了。
通関業者に通知
- 伝達情報: 金融機関コード(4桁)+支店コード(3桁)+口座番号(7桁)
- 通関業者がNACCSに登録し、税金の自動振替を設定。
所要期間:
輸出入者コードの取得と口座登録申請について、全体のプロセスには約1ヶ月かかります。
※目安:
- 輸出入者コード取得:約12日
- リアルタイム口座登録申請後:約2~3週間
リアルタイム口座の申請については、NACCS掲示板やJASTPROの公式サイトより詳しくご確認いただけます。 https://bbs.naccscenter.com/naccs/dfw/web/tetsuduki/realtime/ NACCSS掲示板
リアルタイム口座の活用方法
リアルタイム口座は、輸出入手続きで必要な税金や手数料を即時に金融機関の口座から引き落とす仕組みです。迅速で効率的な税金納付を実現するため、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)と連動しています。
さらに、通関時以外でも以下の用途で広く活用できます。
専用アプリへのログイン
・方法:
リアルタイム口座を利用するには、金融機関が提供するオンラインバンキングや専用アプリにアクセスします。(金融機関によって利用できるアプリが違いますので詳細についてはご利用金融機関までお問い合わせください。)
・セキュリティ強化:
通常のID・パスワードに加え、二段階認証や生体認証(指紋・顔認証)などを使用することが一般的です。
・メリット:
安全性を確保しつつ、いつでもどこでもアクセス可能となります。
即時振込・入金機能の利用
- リアルタイム口座の特徴である即時振込機能を使うと、送金や支払いが即座に相手方に反映されます。特に急な支払いが必要なときや、取引先への送金が必要な場面で有効です。
- 振込の際には、相手方の口座情報を入力し、リアルタイムの送金オプションを選択します。手数料が発生する場合があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
残高の即時確認
- リアルタイム口座では、入出金が発生するとすぐに残高に反映されるため、常に最新の残高を確認できます。リアルタイムの反映により、資金の流れが把握しやすくなります。
- オンラインバンキングやアプリで「口座残高の確認」機能を使用すると、いつでも最新の残高情報を確認できます。
資金移動のスケジュール管理
- リアルタイム口座を活用して、定期的な支払いや資金移動のスケジュールを事前設定することも可能です。例えば、毎月の支払いを特定の日時に自動で行うように設定しておくと、管理が楽になります。
- 一部の金融機関では、振込予約や自動振替機能が用意されており、資金の流れを予め計画しておくことができます。
取引履歴の確認
- リアルタイム口座では、取引が完了すると即座に取引履歴に反映されるため、リアルタイムで履歴を確認することができます。
- アプリやオンラインバンキングから、過去の取引や支払いの明細を閲覧できるため、日々の資金管理に役立ちます。
- リアルタイム口座は迅速な取引が可能であるため、セキュリティ対策も重要です。取引通知をオンにしておくと、不正なアクセスや取引にすぐに気づけます。
- また、一定期間ごとにパスワードを変更したり、ログイン通知を設定することで、口座の安全性を確保できます。
サポートセンターの活用
- リアルタイム口座に関するサポートやトラブルが発生した場合は、金融機関のサポートセンターに問い合わせると、迅速に対応してもらえます。
- 資金移動の制限や、操作方法についての質問にも応じてくれるため、必要に応じて活用しましょう。
このように、リアルタイム口座は、効率的な資金管理やスピーディーな取引を支える強力なツールとして、さまざまなビジネスシーンで活用が可能です。
リアルタイム口座を利用することで、即時性が求められる取引や、資金管理の効率化が実現できます。迅速な入出金、残高確認、取引履歴管理を活用することで、リアルタイムの資金管理をしっかり行うことが可能です。



留意点:リアルタイム口座の残高不足に注意が必要です。口座残高が不足していると、輸入許可が下りず、貨物の引き取りが遅れることがあります。
まとめ
リアルタイム口座は、即時性と柔軟性を兼ね備えたサービスです。このサービスを利用することで、迅速な入出金が可能となり、リアルタイムでの資金管理が実現します。その結果、業務効率が向上し、取引の迅速化によるビジネスの効率化が図れるだけでなく、スピーディな対応によって顧客満足度の向上にも寄与します。さらに、高いセキュリティ機能が提供されるため、安心して取引を行うことができます。
また、資金運用の効率化によって運用コストの削減も期待できるため、特に迅速な対応が求められるビジネスにおいては、大きな効果を発揮します。このように、リアルタイム口座は企業や個人事業主に新しい取引スタイルを提供する、非常に便利で効果的なサービスです。
中国仕入れの場合、多くの輸入代行業者がリアルタイム口座を開設しており、取引の迅速化による業務効率化を実現させています。
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