アリババ(1688)プラットフォームで仕入れを行う日本の企業・個人にとって、サプライヤー(仕入先)の商品に知的財産権リスクがないかを見極めることは、極めて重要な調査業務です。
アリババ(1688)の出店者が言う「正規ライセンス(いわゆる『正版授权』)」は、多くの場合「中国国内で販売できる」ことを意味するに過ぎず、日本へ適法に輸入し、日本で販売できるかどうかは別問題であるケースが少なくありません。
そのため、必ず体系的な方法で検証することが求められます。
本記事では、アリババ(1688)の取引慣行と日本の輸入コンプライアンス要件を踏まえた、実務に即した判断ステップとチェックリストを提示します。
輸入者が行うコンプライアンス審査の基本原理
日中貿易に携わる輸入者にとって、商品の知的財産権コンプライアンスを確保することは、法的リスクを回避し、重大な経済的損失を防ぐための中核的なポイントです。
知的財産権の基本原則
知的財産権(商標権、特許権、著作権など)の保護範囲や効力は、強い属地主義(権利の効力は国・地域ごとに区切られる)という性質を持ちます。
つまり、中国で登録・保護されている権利であっても、自動的に日本で効力を持つわけではありません。
そのため輸入者は、商品が中国と日本の双方の法令に適合しているかを、主体的かつ独立して確認する必要があります。
「中国で販売できるのだから、日本でも販売できるはずだ」と考えるのは、極めて危険です。

確認を行うべきタイミング
コンプライアンス審査を行う唯一正しいタイミングは、「仕入れ前」です。
発注後や生産開始後、ましてや貨物が日本に到着してから確認を行っても、すでに手遅れとなる可能性があります。
その段階で侵害が判明すれば、貨物が税関で差し止められ、廃棄されるだけでなく、権利者から損害賠償を請求されるリスクにも直面します。
事前に一定の調査コストをかけることは、事後に巨額の損失を被ることと比べれば、はるかに合理的で賢明な判断と言えるでしょう。
アリババ(1688)プラットフォームの情報を活用した初期スクリーニング
アリババ(1688)上で仕入先候補を選定する際、オンラインでの初期スクリーニングは、最もコストが低く、かつ効率の高いリスク管理の出発点です。
この段階の主な目的は、知的財産権リスクの高い相手を早期に見極めて除外し、限られたリソースを有望な候補に集中させること、そして後続の詳細確認に向けた論点や質問を整理することにあります。
サプライヤー情報・店舗情報の確認
サプライヤーのトップページや店舗情報を確認する際は、以下のポイントについて、数分かけて丁寧にチェックすることが重要です。
1688サプライヤーの経営規模や信頼性は、誠信通の利用年数、「実力商家」や「牛頭工場(1688による工場認証マーク)」の表示、工場実景の動画・写真という三つの観点から総合的に判断できます。詳しくは、以下のリンクからご確認ください。

「何でも扱う店舗」への警戒
一つの店舗で、ドライバーからぬいぐるみ、スマートフォンケースまで幅広い商品を扱っている場合、その多くは貿易会社または卸売業者と考えられます。
このような業者は生産現場への統制力が弱く、知的財産権の権利関係を体系的に説明できないケースが多いため、トラブル発生時の追跡や責任の所在が不明確になりがちです。
コンプライアンスを重視する輸入者であれば、特定のカテゴリーに特化した工場型サプライヤーを優先的に検討すべきです。
「ブランド」欄の確認
商品詳細ページにある「ブランド」欄は、必ず確認してください。
サプライヤーがブランド名を記載している場合は、必ずクリックして詳細を確認する必要があります。ここには、主に次の二つのリスクがあります。
- 虚偽または誤解を招くライセンス表示
サプライヤーが、著名ブランド(例:「ディズニー」「任天堂」「無印良品」など)を記載していることがありますが、それは正規の使用許諾を意味するものではありません。
国際的に知名度の高いブランド(特に日本ブランド、ラグジュアリーブランド、アニメIP、家電・電子機器分野)が表示されている店舗については、即座に高リスクと判断し、警戒レベルを最大に引き上げるべきです。 - 曖昧な表現
「○○工場の自社ブランド」や、聞き慣れないブランド名が記載されているケースもあります。
これらは相対的にリスクは低いものの、当該ブランドが第三者の先行権利と抵触していないかを、他の情報と併せて必ず確認する必要があります。
商品内容の深掘り分析と、侵害リスクの高い典型例
不自然に安い価格:商品の価格が、一般的な相場や市場調査の結果と比べて著しく低い場合、その異常な低価格は、侵害品に共通する最も典型的な特徴の一つです。
「新しすぎる」商品:知名度の低い工場が、国際的な有名ブランドが発表したばかりの人気商品と酷似した製品を突然出品している場合があります。これは、非正規のルートで設計資料を入手し、模倣を行った結果であることが多く、相手方の意匠権(外観デザイン)や著作権を侵害している可能性が高いと考えられます。
商品画像の「細部」を確認する:
- 他社ブランドの透かし(ウォーターマーク)やロゴ:
商品画像に他社のロゴが明確に表示されている場合、画像の無断使用である可能性が極めて高いと言えます。
オリジナルの製品画像すら用意できないサプライヤーについては、商品の出所の正当性や信頼性に大きな疑問が生じます。 - 重要部分のモザイク処理:
商品画像上のブランドロゴや特徴的な図柄が、意図的にモザイクやシールで隠されている場合、侵害品である可能性が極めて高く、プラットフォームの審査を回避しようとする典型的な手口です。
このような商品に遭遇した場合は、即座に取引対象から除外すべきです。

サプライヤーへの重要な質問と証明書類の提出要求
オンラインでの初期スクリーニングを終えた後、次のステップは、仕入先候補との正式なコミュニケーションです。
この段階は極めて重要であり、目的はもはや「相手が何を言うか」ではなく、「何を提示できるか」を確認することにあります。
すべてのやり取りを、証拠収集のプロセスとして捉えてください。
基本原則:証拠が最優先、記録がすべて。
- 重要なコミュニケーションは必ず、アリ旺旺(AliWangwang)、メールなど、書面記録が残る手段で行ってください。
- サプライヤーの口頭での約束は、法的リスクや税関職員の判断において、一切通用しません。
質問リスト:戦略的な聞き方
- 「本製品は、貴社による自主的な開発・設計によるものですか?」
- 「本製品で使用されている[商標/図柄/形状]に、知的財産権は存在しますか。権利者は貴社ですか、それとも第三者ですか?」
- 「第三者の知的財産権が関係する場合、許諾関係(ライセンス)の連鎖を証明する書類を提示できますか。原権利者から貴社に至るまでの流れが確認でき、かつ日本向けの製造・輸出・販売を明確に許諾していることを示す資料が必要です。」
- 「本製品を日本へ輸出した際、過去に税関で差止めや、知的財産権侵害の申立てを受けた事例はありますか?」
必ず提出を求め、確認すべき証明書類
サプライヤーが権利保有や使用許諾を主張する場合、以下の書類の提出を求め、最低限の確認を行う必要があります。
- 商標登録証/特許証:
サプライヤーが自社の知的財産権であると主張する場合、中国または日本における商標登録証・特許証の提出を求めます。
登録名義人がサプライヤーの会社名と一致しているか、指定商品・役務の範囲が仕入予定の商品を含んでいるか、そして権利の法的状態が有効であるかを必ず確認してください。 - ブランド・著作権の使用許諾書:
これは最も重要な書類です。適切な許諾書(可能であれば原本のスキャンデータ)には、以下の要素がすべて含まれていなければなりません。- 許諾者および被許諾者の明確な情報(会社正式名称、押印)。
- 許諾対象となる知的財産の特定(具体的な商標登録番号、IP名称等)。
- 許諾される商品範囲(必ず、仕入対象の具体的な商品を含むこと)。
- 販売・利用が認められる地域範囲(「日本」または「全世界」と明記されていることが必須。「中国」や「中国本土」のみの記載では無効)。
- 許諾される権利内容・販売チャネル(輸出権および消費者向けの再販売権が含まれているか)。
- 明確な許諾有効期間(製造期間、国際輸送期間、日本での販売期間を十分にカバーしていること)。
【重要】提出書類の真偽と有効性・適用可能性を、必ず独立して確認する
1688の「88查」を活用し、サプライヤーのリスクを迅速に把握する
これまで、商標・特許・著作権を確認するには、複数の政府系サイトや民間の検索サービスを行き来する必要があり、時間と手間がかかっていました。
現在では、より効率的な方法があります。それが、1688公式が提供する 「88查」 ツールです。
本ツールを利用することで、サプライヤーの基本的な企業像を短時間で把握でき、特に法務面や知的財産権に関する潜在的リスクの有無を確認するのに適しています。初期スクリーニング用途として非常に有効です。
操作ガイド:
- 入口を確認する
関心のあるサプライヤーの1688企業ページを開き、「工厂档案」(工場情報)タブを探してクリックします。
- 詳細チェックを開始する
「工厂档案」ページ内にある 「深度解读」 セクションを見つけ、その横の 「查看详情」 ボタンをクリックします。
すると、当該サプライヤー専用の「88查」詳細ページへ遷移します。

- リスク警告を優先的に確認する
「88查」ページにアクセスしたら、すべての情報を精査する前に、まず 「法律诉讼」(訴訟) と 「经营风险」(経営リスク) の2項目を重点的に確認してください。
赤色の警告表示や具体的な訴訟・紛争履歴が確認できる場合、慎重な対応が求められ、取引継続の可否を再検討すべき段階といえます。
- 知的財産権の全体像を把握する
- 基本的なリスクが許容範囲内であれば、次にページ上で目立つ 「AI企业背调」(AIによる企業背景調査) ボタンをクリックします。システムが自動的に詳細な企業調査レポートを生成します。
- レポート内の 「知识产权」(知的財産権) セクションでは、
当該企業名義で登録されている 商標情報、特許情報、著作権情報 が一覧で表示されます。
ここを確認することで、サプライヤーが主張する「自社ブランド」が実在するのか、
研究開発型のメーカーなのか、あるいは単なる貿易会社なのかを、客観的に把握することができます。

利用時の重要な考え方:
「88查」は、あくまで効率的な一次スクリーニングツールです。目的は、短時間で致命的な問題を見つけ出すことにあります。
「88查」は、個別商品のライセンス書類を厳格に確認する後続プロセスを代替するものではないことを、必ず理解しておく必要があります。
日本国内リスクへの備え|JPOで行う最終確認
第1章で述べたとおり、中国のサプライヤーがどれほど整ったライセンス書類や特許証を提示してきたとしても、
日本で販売を行う以上、必ず実施しなければならない最後かつ最重要のステップがあります。
それが、日本の公式データベースにおいて、自ら独立して確認を行うことです。
日本特許庁(JPO)データベースでの独立検索
- 商標検索:日本で使用を予定しているブランド名やロゴを入力し、販売予定の商品区分において、すでに第三者によって登録されていないかを慎重に確認します。特に、権利者が誰であるかを重点的にチェックしてください。
- 意匠検索(最重要ポイント):これは、越境取引において最もトラブルが多発する「最大の落とし穴」です。商品の現物や画像をもとに、キーワードや意匠の国際分類(ロカルノ分類)を用いて、日本において同一または高度に類似する有効な意匠登録が存在しないかを調査します。日本の法律では「見た目が似ている」デザインも保護対象となるため、商標が付されていなくても、意匠権侵害と判断される可能性があります。
- 特許検索:商品に特有の機能や技術的特徴がある場合には、該当する技術分野において、日本で有効な特許が存在しないかを確認し、技術的侵害リスクを回避する必要があります。
確認作業の核心的な目的
- 日本で販売を予定しているブランド、外観、技術が、日本国内市場において、競合他社やブランドオーナーによってすでに登録・保護されていないかを確認すること。
- もし日本で既に登録されていることが判明した場合、必要となるのは日本の権利者からの正式な許諾であり、中国のサプライヤーからの許諾のみでは不十分です。この点を無視して販売を行えば、日本の知的財産権を直接侵害することとなり、貨物の差押え、損害賠償請求、さらには訴訟リスクに直面することになります。
1688で相対的にリスクが低い商品カテゴリと、特に警戒すべき商品カテゴリ
1688から「相対的に安心して」輸入できるケース
日中間の越境仕入れにおいても、実務上、知的財産権リスクが相対的に低い商品カテゴリや取引形態は存在します。
ここで言う「相対的に安心」とは、以下の基準のうち少なくとも2つ以上を満たす場合、知的財産権トラブルが発生する確率が大きく低下することを意味します。
完全に無ブランド・無IP・明確なデザイン由来がない商品
商品自体がいわば「白紙」の状態であり、第三者に帰属し得る標識や創作要素を一切含まないものです。
- ベーシックな衣料品: 無地のTシャツ、インナー、無地ソックス
- ベーシックな生活用品: 無地の陶磁器食器、無地タオル、透明なガラスコップ
- 原材料・半製品: 規格品の生地、金属パーツ、電子部品
汎用品/機能重視型/消耗品
これらの商品は、基本的な機能性や実用性に価値があり、デザインの差異が小さく、市場にはほぼ同一形状の商品が多数存在します。
- 工具類: ドライバーセット、ペンチ、メジャー
- 消耗品: 特殊配合のない一般的なキャンドル、黒色ゴミ袋、コピー用紙
- 基本アクセサリー: USBケーブル(特定ブランド・型番に依存しないもの)、IP柄のないスマホケース、一般的なハンガー
外観が業界共通で、日本の人気商品を想起させないもの
業界標準のデザインであり、見ただけで特定の日本ブランドやヒット商品を連想させない外観であること。
- ベーシックな収納ボックス(直方体・直角・特殊構造なし)
- 極めてシンプルな口広タイプのガラス花瓶
自社ブランド(OEM/ODM)として展開できるもの
仕入先と協力し、購入者自身のブランド(商標)を使用する取引形態です。
この場合、知的財産権の中心は商品内容ではなく表示(商標)に移り、リスク主体は購入者自身となります(自社ブランドが第三者の権利を侵害していないことが前提)。
これは安全性の高い取引モデルと評価できます。
- ロゴを入れたタオル、キャンバスバッグ
- 自社ブランド包装の茶葉、乾物などの一次農産品
商品画像の再撮影・包装の変更
これは、リスクを意図的に切り離すための有効な手段です。
包装を変更し、商品写真を撮り直し、販売時には自社の商品名・説明文を用いることで、1688の商品ページに含まれる潜在的な侵害要素との関連性を完全に遮断できます。
- サプライヤーの画像背景に、ぼかされたアニメポスターが写り込んでいる場合でも、納品後にすべて自社スタイルで再撮影する
- 汎用品に対して、新たに著作権上問題のないオリジナル包装を設計する
重要な注意点:
上記の条件を複数満たす商品であっても、基本的なサプライヤー審査や明確な契約条項は不可欠です。
「相対的に安心」とは、無条件で発注してよいことを意味するものではなく、初心者が検討しやすい低リスク領域を示すに過ぎません。
1688で特に警戒すべき「高リスク商品カテゴリ」
日本の知的財産法制の特性を踏まえると、以下の3カテゴリは1688上で極めてセンシティブです。
これらに該当する商品については、サプライヤーがどのような説明を行ったとしても、リスクレベルを最上位に設定し、原則として不適法の可能性が高いものとして扱うべきです。
例外は、十分かつ客観的な反証資料を入手できた場合に限られます。
明確にブランド表示がある商品
商品本体、包装、ラベル等に、ブランド名・ロゴ・特定の型番やシリーズ名(例:「Pokémon」「SONY」「〇〇コラボモデル」など)が明確に表示されているもの。
これは最も判断が容易で、典型的な商標権侵害に該当します。日本の税関はこの種の侵害に対し、一切容認しない厳格な姿勢(ゼロトレランス)を取っています
アニメ・ゲーム・キャラクター・特定のイラスト表現を用いた商品
著名なアニメキャラクターやゲームの登場人物(例:「ポケモン」「鬼滅の刃」、任天堂のキャラクター等)、または特定作品に由来することが明らかな図柄・造形を使用している商品です。
これは日中越境取引において最もトラブルが多い分野であり、原則として回避することを強く推奨します。
- 知っておくべき厳しい現実: 1688でサプライヤーが主張する「ライセンス保有」は、次のいずれかに該当するケースが大半であり、日本向け輸入には無効です。
- 中国国内限定の販売許諾
- 再許諾不可の下位ライセンス(サプライヤー自身の使用は可能だが、第三者への製造・販売権は含まれない)
- 越境販売、特に日本向け販売権を一切含まないもの
日本の人気商品に「酷似」した外観の商品
商標表示はないものの、全体の形状、デザインテイスト、機能配置が、日本の著名商品と高度に類似しているケースです。
これは意匠権(外観デザイン)侵害のリスクが極めて高く、単純な商標検索では回避できません。
日本の税関および裁判所は、既に日本で登録された意匠と比較し、全体的な視覚印象が類似しており、消費者に混同を生じさせるおそれがあると判断すれば、侵害として認定し、貨物を差し止めることが可能です。
まとめ
1688において、「正規ライセンスがある」という説明だけで、日本へ安全に輸入できることが証明されることは決してありません。
日本の購買担当者が本当に行うべきことは、日本の税関および日本の販売プラットフォームの視点に立ち、商品を逆算的に検証することです。
高額商品、大量発注、または高リスクが疑われる取引については、
中国の知的財産コンサルタントや弁護士に依頼して専門的なデューデリジェンスを実施することへの投資は、
日本での貨物廃棄や訴訟リスクと比較すれば、十分に合理的で低コストな判断と言えるでしょう。
ラクット輸入(Rakutto)は、中国輸入に特化した実務支援サービスとして、
日本税関の水際実務と実際の輸入現場を熟知したチームが、
「止められない輸入」を実現するための具体的な対策をご提案します。











