日本企業が中国から商材を輸入する際には、関税や輸入消費税(国内消費税)がコストに大きく影響します。本記事では、その基本的な仕組みや計算方法から、商品カテゴリ別の具体的な税率と計算例、中小企業と大企業の関税管理の違い、原産地証明による関税軽減策、関連する輸入手続き、そして逆算課税のリスクまで、実務的な観点で詳しく解説します。
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※本記事は、中国OEM商品の調達代行を専門とする【ラクット!】が、実際の支援現場で得た知見をもとに執筆しています。「中国から商材を仕入れたいが、関税や通関が不安…」という企業様に向けて、関税の基本から実務のコツまでをわかりやすく解説します。
ラクット!に相談する →1. 関税・消費税の基本構造と計算方法
まず、日本の輸入時に課される税金の基本構造を押さえましょう。輸入時には主に関税と輸入消費税(国内の消費税)が課税されます。計算は以下のような流れになります:
課税価格(CIF価格)の確認
商品のインボイス価格(FOB価格)に運賃や保険料など輸送コストを加えたものが課税対象となる価格です。CIFとは Cost, Insurance and Freight の略で、商品の価格に保険料と運賃を含めた価格条件を指します。
関税額の計算
関税率は商品(HSコード)ごとに定められており、その課税価格(CIF)に対して適用されます。関税額 = 課税価格 × 関税率 で算出され、算出後は100円未満切り捨てとなります。
輸入消費税の計算
消費税は「課税価格 + 関税額 + その他の内国税額」の合計に対して課されます。計算式で表すと、輸入消費税額 = (CIF価格 + 関税額 + 酒税など内国消費税) × 消費税率 です。日本の消費税率は現在10%(内訳:国税7.8%+地方税2.2%)となっています。
消費税の課税対象には関税も含まれるため、仮に関税が無税でも課税価格が適正でないと消費税額に影響します。日本円換算は輸入申告の前々週の為替レート平均値(税関公示レート)を用いる点も覚えておきましょう。
関税と輸入消費税の計算例
課税価格(CIF)が50万円の商品に関税率12%が適用される場合:
- 関税額 = 500,000円 × 12% = 60,000円
- 消費税額 = (500,000円 + 60,000円) × 10% = 56,000円
- 合計税額 = 60,000円 + 56,000円 = 116,000円
このように、関税を加えた額に消費税が課されるため、関税額自体にも消費税10%が上乗せされる点に注意が必要です。
税金の種類 | 課税対象となる金額(課税標準) | 税率・計算方法 |
---|---|---|
関税 | CIF価格(商品価格+運賃+保険料) | 商品のHSコードごとに定められた関税率を適用 |
輸入消費税 | CIF価格+関税額+内国消費税額等の合計 | 消費税率10%(内訳:国税7.8%、地方税2.2%) |
2. 商品カテゴリ別の関税率と具体的な計算例
輸入する商品の種類によって、適用される関税率は大きく異なります。ここでは代表的な商品カテゴリについて、一般的な関税率の目安と具体的な計算例を紹介します。
衣類(ファッション製品)
衣類・アパレル製品は比較的関税率が高めに設定される傾向があります。日本へ衣類を輸入する場合、課税価格が20万円を超える場合は一般税率(細かい品目別の関税率)が適用され、20万円以下の場合は簡易税率(一律5%または10%)が適用されます。
主な衣料品の一般関税率(目安):
- コート・ジャケット・ズボン・スカート(繊維製):約8.4~12.8%
- シャツ・下着類:約7.4~10.9%
- 水着:約8.4~10.9%
- ネクタイ(織物製):約8.4~13.4%
- マフラー類:約4.4~9.1%
- (参考)毛皮のコート:20%
計算例:衣料品(シャツ)の場合
課税価格(CIF)が100万円、関税率10%の場合:
- 関税額 = 100万円 × 10% = 10万円
- 消費税 = (100万円 + 10万円) × 10% = 11万円
- 税金合計 = 21万円(関税10万円+消費税11万円)
製品価格の約20%以上が税金となる計算になります。
電子機器(スマートフォン・PC等)
電子機器類は一般に関税率が低いか無税の品目が多いです。情報技術製品については多くが国際協定(ITAなど)により関税撤廃されており、例えば携帯電話・スマートフォン(HS8517.14)やパソコン類(HS8471等)などは関税が無税(0%)となっています。
計算例:ノートパソコンの場合
課税価格(CIF)が50万円、関税率0%の場合:
- 関税額 = 0円
- 輸入消費税 = 50万円 × 10% = 5万円
- 税負担 = 5万円(消費税のみ)
関税がかからないからと言って手続きを怠ると、CIF価格の申告ミスにより消費税額に影響することもありますので注意しましょう。
部品・部材(機械部品、電子部品等)
機械部品や電子部品などの工業製品の部材は、衣類や食品に比べて関税率が低めに設定されています。日本は工業製品については比較的低関税政策をとっており、特に基幹的な部品については0~5%程度の関税率が多いのが特徴です。
計算例:機械部品の場合
課税価格(CIF)が200万円、関税率3%の場合:
- 関税額 = 200万円 × 3% = 6万円
- 消費税 = (200万円 + 6万円) × 10% = 20万6千円
- 合計税額 = 26万6千円
食品(農産品・加工食品)
食品類(農産物・食品加工品)は関税率が高めに設定されている品目が多く、日本国内産業保護のため特に農産物には高関税・関税割当などの措置がとられています。
食品関税率の例:
- 牛肉:一般関税率38.5%(セーフガード発動時は50%)
- バナナ:約40%前後
- 調製食料品(スナック菓子等):概ね20%前後
- チョコレート菓子:基本税率10%(関税割当枠超過分)
計算例:調味ソースの場合
課税価格(CIF)が30万円、関税率20%の場合:
- 関税額 = 30万円 × 20% = 6万円
- 消費税 = (30万円 + 6万円) × 10% = 3万6千円
- 合計税負担 = 9万6千円
食品を輸入する際は、関税以外にも動植物検疫や食品衛生法に基づく届出など、通関以外の手続きも必要になりますのでご注意ください。
3. 中小企業と大企業における関税管理の違い
輸入業務に取り組む際の関税管理の体制は、企業の規模によって大きく異なります。ここでは中小企業と大企業それぞれの典型的な実務対応を事例ベースで比較します。
中小企業の関税管理事例
社員数十名規模の中小企業A社の例
- アパレル商品を中国から輸入している
- 貿易実務の専任担当者はおらず、営業担当者が兼任
- 輸入通関手続きはほぼ全て通関業者(フォワーダー・乙仲)に委託
- 商品が届いた際に通関業者から提示される関税・消費税額を確認し支払い
- 事前に自社で関税額を詳細にシミュレーションすることはあまりしていない
- 税関への問い合わせや事前教示の取得も、通関業者の助言を受けながら実施
このように、中小企業では通関業務を外部委託し、自社では最小限の関与にとどめるケースが多いです。通関業者との信頼関係が重要になりますが、制度改正や新たな優遇措置に気づかないリスクもあります。
大企業の関税管理事例
社員数千名規模の大企業B社(電機メーカー)の例
- 中国や東南アジアから電子部品を大量調達
- 国際物流部門や貿易管理チームが社内にあり、複数の通関士有資格者が在籍
- 輸入する全商品のHSコードを自社で管理リスト化し、定期的に見直し
- 重要な部品については税関の事前教示制度を積極的に活用
- 将来の関税改正やFTA適用可能性について社内で情報収集
- 通関手続き自体は外部業者に依頼するが、申告内容は社内でチェック
- AEO(特定輸入者)認定を受け、輸入許可前引取り制度や納税申告特例制度を活用
- 関税コストの事前管理や最適化策の社内検討が日常的に行われている
大企業では専門部署を設け自社で積極的に管理することで、関税コスト削減の施策(FTA活用、事前分類、分割輸送の検討等)を講じ、競争力強化につなげています。
中小企業が取るべき関税管理の現実的なアプローチ
中小企業では専任の貿易担当者を置くことが難しい場合も多いですが、以下のようなアプローチで効率的な関税管理が可能です。
効果的な関税管理のポイント
- 信頼できる通関業者との協力関係構築:単なる業務委託先ではなく、パートナーとして情報共有を密にする
- 主要輸入品のHSコードと関税率を把握:少なくとも主力商品については自社でも基本情報を理解する
- FTA/EPA活用可能性の確認:通関業者に任せきりにせず、特に日中間のRCEP利用可能性を検討する
- 定期的な関税コスト分析:半年に一度程度、全体の関税負担を分析し削減余地がないか検討する
4. 原産地証明とEPA/FTA活用による関税軽減策
関税コストを削減・免除する方法として、自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA) の活用が挙げられます。特に日中間のRCEP協定を活用することで、関税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
日中間RCEP協定の概要と効果
日本と中国の間では、2022年1月に発効したRCEP(地域的な包括的経済連携協定)が初めて本格的な関税引下げを実施するEPAとなっています。日本が中国から輸入する品目の約88%が最終的に無税になる見通しです。
RCEPによる関税削減のポイント:
- 協定発効時点ですぐに約25%の品目で関税が即時ゼロとなります
- 残りの多くの品目も段階的に関税率が下がっていきます
- 2025年は協定発効4年目となり、さらに関税率が引き下げられています
- 最新の実行関税率表(2025年1月1日版)で現在の適用税率を確認できます
EPA活用のステップ
EPAを活用して関税を削減するには、以下のステップを踏む必要があります。
協定税率の確認
まず輸入予定の商品がEPAで関税削減対象になっているか、協定税率が何%かを確認します。日本関税協会や税関の「実行関税率表(EPA税率欄)」で調べることができます。例えばRCEP、中国からの繊維製衣類は段階的削減対象であるものの即時ゼロではない、といった品目もあります。
原産地要件の充足
EPA税率を適用するには、その商品が協定で定める原産品基準を満たす必要があります。一般に「〇%以上の原産地材料使用」や「特定の工程を当該域内で実施」などの要件があります。中国製品であれば中国国内での生産・加工度合いが基準を満たしていることが必要です。
原産地証明書の取得
原産地証明書(Certificate of Origin)を取得します。RCEPの場合、中国側の政府指定機関や商工会議所等で発給を受けるか、または一定の条件下で輸出者・生産者による自己証明(原産地声明)も認められています。
税関への申告
輸入通関時に、通常のインボイスやパッキングリストに加えて原産地証明書を税関に提出し、輸入申告書上でEPA税率適用の申告を行います。税関が証明書を審査し、適格と認められれば協定税率が適用され、関税が減免されます。
RCEP活用の注意点
- 段階的削減スケジュールの確認:即時関税ゼロとならない品目も多いため、現在の税率を確認する
- 原産地証明書発行の準備期間:中国側での発行手続きに数日かかることがあるため、余裕をもって手配する
- サプライヤーとの連携:原材料明細や製造工程の情報提供をサプライヤーに依頼する必要がある
- 書類保存義務:EPA適用輸入に関する書類は一定期間(通常5年)の保存義務がある
RCEP活用の具体例
関税率5%の機械部品(CIF価格100万円)にRCEP特恵税率2.5%を適用した場合:
- 通常の関税額:100万円 × 5% = 5万円
- RCEP適用後の関税額:100万円 × 2.5% = 2万5千円
- 削減効果:2万5千円(50%削減)
これに消費税計算も加えると、さらに削減効果が高まります。
5. 輸入手続きの流れと必要な準備
中国から商品を輸入するにあたり、関税計算と並行して進める輸入手続きがあります。関税額を適正に納付するためにも、以下の手順と準備を押さえておきましょう。
HSコードの調査と分類
輸入予定の商品がまずどのHSコード(関税分類)に該当するかを調べます。HSコードにより関税率や必要な他法令手続きが決まるため、ここが非常に重要なステップです。
HSコード確認方法
- 税関や日本関税協会のウェブサイトで検索
- 税関の事前教示制度を利用(回答は3年間有効)
- 通関業者に相談
- 税関の分類相談窓口を利用
必要書類の準備
輸入通関には以下の書類が必要です。これらの書類が正確かつ整合性を持って準備されていることが重要です。
主な必要書類
- インボイス(商業送り状):品名、数量、価格、原産国、貿易条件を記載
- パッキングリスト(梱包明細書):梱包内容、数量、重量などを記載
- 船荷証券/航空運送状:貨物の運送証明書
- 原産地証明書(FTA活用時):特恵税率適用のために必要
- 各種許可証(該当する場合):食品なら検疫証明、電気製品ならPSE証明など
通関業者への依頼・書類提出
通関業者(または自社通関部門)が輸入申告書を作成し、税関のNACCSシステムを通じて輸入申告を行います。申告書には課税価格や適用関税率、関税額、消費税額なども記載されます。
申告内容に誤りがあると納税額の誤差や許可遅れにつながるため、業者任せにせず自社でもダブルチェックすることをお勧めします。特に初めて扱う品目やEPA適用貨物では、申告内容を事前によく確認しましょう。
税金の納付と貨物引取
税関が申告を審査し問題なければ「輸入許可」となります。許可前または同時に、関税・消費税を納付します。納税が確認されると貨物の引取りが可能になります。
納税方法:
- 立て替え納税:通関業者が一時立て替えて後で請求
- 直接納税:輸入者が指定口座に振り込む
- AEO認定事業者は輸入許可前引取りや納税期限延長などの特例あり
効率的な輸入手続きのためのポイント
輸入手続きの成功ポイント
- HSコード分類の正確性:品目分類は関税率だけでなく輸入規制や許可の要否にも影響
- 書類の整合性確保:すべての書類間で情報が一致していることを確認
- 適切な申告価格:実際の取引価格を正確に反映した申告価格とする
- FTA/EPAの活用:特にRCEPなど、関税削減が可能な協定は積極的に活用
- 通関業者との情報共有:特殊な商品や初めての輸入品については事前に打ち合わせ
6. 逆算課税のリスクと関税回避に関する注意点
不適切な申告や関税回避行為に対するリスクについて触れておきます。輸入において申告ミスや故意の過少申告があった場合、税関の事後調査等で発覚すると追徴課税(逆算課税)を受ける可能性があります。
日本の税関は毎年、一定割合の輸入者に対して事後調査を実施しています。例えば過去の調査では、調査対象の約70%に申告漏れが指摘され、多額の追徴税額が発生しています。
関税回避の危険性と正しい対応
関税の回避策として違法またはグレーな手段に手を染めることは、重大なリスクを伴います。以下のような行為は避けるべきです。
インボイス価格の過小設定
サプライヤーと示し合わせて実際より低い価格をインボイスに記載し関税評価額を下げる行為は、税関が疑義を抱いた場合、類似品の市場価格や輸入者の販売価格から逆算して本来の価格を算定(逆算課税方式)し直されます。結果的に不足税額を徴収され、悪質と判断されれば重加算税(最大35%)の対象です。
HSコードの恣意的な変更
本来より関税率の低いHSコードに該当すると虚偽申告する行為も違反です。税関は貨物検査や書類審査で商品実態を把握するので、不適切な分類は指摘され追徴課税となります。分類に迷ったら事前教示を利用するなど、正攻法で臨みましょう。
原産地証明の誤用
EPAを適用するために、実は原産地要件を満たさないのに無理に原産地証明書を取得・提出するケースにも注意です。税関は協定適用貨物について原産地調査を行うことがあり、要件不充足が判明すれば、免除されていた関税を遡って徴収されることになります。
コンプライアンス重視の関税対応
関税コンプライアンス違反を避けるためには、「最初から正しく申告し、正しく納税する」ことが一番の策です。日頃からインボイスの金額や取引条件を正確に反映し、曖昧な点があれば税関や通関業者に相談することが重要です。
コンプライアンス重視のメリット
- 事後調査でのリスク回避
- 追徴課税や加算税のペナルティ防止
- 安定した輸入業務の継続
- 企業の社会的信用維持
- 長期的なビジネス関係の構築
7. 輸入関税に関する成功事例と失敗事例
実際の現場での経験から、関税管理における成功事例と失敗事例を紹介します。他社の事例から学ぶことで、自社の関税対策に活かしましょう。
成功事例
事例1:RCEPを活用したアパレル企業の関税削減成功
東京のアパレル輸入企業C社は、中国から年間約1億円相当の衣類を輸入していました。従来は一般輸入として平均10%の関税を負担していましたが、2022年のRCEP発効を機に、輸入体制を見直しました。
主力商品のHSコードを精査し、中国のサプライヤーと連携して原産地証明書の取得手続きを整備。その結果、同年から約半数の商品でRCEP特恵税率(第1年目は8%程度)を適用することに成功し、関税負担を約20%削減。さらに年次で下がる税率スケジュールを活かし、5年後には関税コストを半減させる計画を実行中です。
事例2:HSコード事前教示による輸入安定化
大阪の雑貨輸入業者D社は、新規に取り扱う家庭用調理器具について、HSコード分類に不安がありました。類似品には約3%の関税率が適用されていましたが、この製品は特殊な機能を持っていたため、より高い関税率(6%)が適用される可能性も懸念されていました。
D社は貿易顧問と相談の上、製品の詳細な仕様書と写真を準備し、税関の事前教示制度を利用して正式なHSコード判定を申請。結果として、有利な3%のHSコードで承認を受けることができました。この事前準備により、通関時のトラブルを回避し、輸入計画の確実性も高まりました。
事例3:関税コスト分析による製品構成の最適化
IT機器の輸入販売を行うE社は、製品によって関税率に大きな差があることに着目しました。例えば、完成品のPC周辺機器には4.2%の関税がかかる一方、部品キットとして輸入すれば無税または低税率で輸入できる可能性がありました。
E社は製品ラインナップ全体の関税コスト分析を実施し、高関税の製品については製品構成を見直し、一部を部品キット形式に変更。法令の範囲内で合法的に関税負担を約35%削減することに成功しました。
失敗事例
事例1:インボイス価格操作による追徴課税
東京の中小貿易会社F社は、中国からの輸入時の関税を少しでも抑えるため、中国のサプライヤーと示し合わせて、インボイス上の価格を実際の支払い額より約30%低く記載していました。
数年後の税関による事後調査で不正が発覚。過去3年分の輸入について見直しが行われ、本来支払うべき関税約1,200万円に加え、重加算税約400万円の追徴課税を受ける結果となりました。短期的な節税効果以上のペナルティを負うことになり、企業の信用も大きく損なわれました。
事例2:原産地証明書の要件不備によるEPA適用否認
愛知県の自動車部品輸入業者G社は、中国から輸入する自動車用ヘッドライト部品についてRCEP特恵税率(通常の関税率5%から初年度3.5%に減免)の適用を試みました。
中国の製造元から原産地証明書を取得し申請しましたが、税関審査の結果、製品に使用されている一部の電子部品が中国産ではなく第三国産であることが判明。RCEP協定の原産地規則(域内原産割合基準)を満たしていないと判断され、特恵税率の適用が否認されました。緊急輸入だったため、一般税率での通関を余儀なくされ、予定外の関税コスト増(約100万円)が発生しました。
事例3:HSコード誤分類による追徴課税と納期遅延
福岡の輸入商社H社は、中国から新規の家電製品を輸入する際、従来の類似商品のHSコードをそのまま適用し、関税率0%として申告しました。
しかし、税関検査でこの製品には新機能が付加されており別のHSコードが適用されるべきと判断され、関税率4.8%の適用と修正申告を求められました。結果として追加の関税約50万円の支払いが発生しただけでなく、通関手続きが1週間以上遅延し、顧客への納期遅れにもつながりました。
事例から学ぶポイント
成功のための教訓
- 合法的なコスト削減策の活用:FTA/EPAなど正当な制度を活用する
- 事前準備の重要性:HSコード分類や原産地要件など、不明点は事前に確認・準備する
- コンプライアンス重視:長期的な正当なビジネス運営を心がける
- 専門知識の確保:社内または外部の専門家を活用する
8. まとめ
中国からの商品調達は魅力的ですが、関税や消費税といった見えにくいコストを把握することが成功の鍵です。本記事で解説したように、関税・輸入消費税の仕組みや計算方法を理解し、自社の扱う商品に適用される税率を事前に調べておきましょう。また、企業規模に応じた適切な関税管理体制を築き、利用可能なFTA/EPAで関税を最適化することも重要です。
2025年のRCEP活用ポイント
2025年は協定発効から4年目を迎え、多くの品目で関税率が段階的に下がっています。最新の実行関税率表(2025年1月1日版)で現在の適用税率を確認し、RCEP原産地証明書の取得を検討しましょう。
特に2022年に発効したRCEPは、日中間貿易において歴史的な意義を持つ協定です。今まで関税削減の対象外だった中国輸入品が、今後段階的に関税撤廃されていくことは、日本企業にとって大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。この機会を活かすため、適切なHSコード分類、原産地規則の理解、必要書類の準備など、基本的なステップを確実に実行していくことが重要です。
最後に、関税管理は一度きりの施策ではなく継続的なプロセスであることを強調しておきたいと思います。定期的に自社の輸入実態を見直し、商品ラインナップの変化や関税制度の改正に応じて、常に最適な対応を取ることが大切です。